本格的な漬物について

― 漬物の概略をご説明いたします ―



「漬かる」ということ

― 漬物の基本概念です ―

漬物は元々は野菜が取れない時の保存食として作られていました。生の野菜では日持ちが短く量がかさばる為に塩などで漬け込み、余分な水分等を取り除いて、味付けをして長持ちさせるのが元来の目的でした。

 

野菜は細胞から作られていて、その細胞は細胞膜(細胞壁)で囲まれており、細胞の中は細胞液で満たされています。野菜に塩をかけると塩分が野菜の細胞内に入り込み、水分が細胞からしみでて、野菜が軟化します。この細胞膜に塩分が入り込み、水分を外に出す力を浸透圧と言います。

 

この塩などで、細胞液の水分等を細胞の外へ出して、塩味や甘味など味が通りやすくなる現象を「漬かる」と言います。漬物の業界では浸透圧による「漬かる」現象を利用して様々な種類の漬物を製造しています。(*)

 

細胞膜(細胞壁)を壊す現象は塩だけではなく、砂糖やアルコール、酢などでも出来ますが、塩の浸透圧が最も高く、価格も安価です。また、伝統的な味の兼ね合いもあり、漬物を漬ける際には基本的にを用います。

 

漬物を漬ける際に、野菜に塩を少量用いて、生に近い野菜の食感に漬けたものが「浅漬」です。これに対して、野菜に多めに塩を用いて長期間保存出来るように漬けたものを「塩蔵野菜」といいます。漬物業界では「塩蔵野菜」を「塩漬」とも呼びます。

 

まとめると「塩蔵野菜」=「塩を多量に使った塩漬」となります。

 

本格的な漬物を漬ける際には、まず「塩蔵野菜」を漬けることから始まります。

漬物カフェでは今後「塩蔵野菜」を「塩漬」と呼んでいこう思います。

 

 

 

(*)前田安彦:漬物学、幸書房より

漬物 色々 店 漬物カフェ
漬物店の光景

「塩漬」を漬ける

― 本格的な漬物の基礎です ―

日本は四季があり、その季節で旬の野菜が大量に収穫されます。当然ながら、旬の時期には野菜の価格が安くなります。この時期に野菜を大量に漬け込み、塩漬にする事で漬物原料の安定供給・安定確保を可能にします。

 

基本的には野菜の旬の時期は1年に1回ですので、漬物製造業界ではこの時期に集中的に塩漬の漬け込みを行います。例えば、高菜の漬け込みはは春先の2~3月、胡瓜・瓜などは夏口の6~7月、大根は秋~冬などです。(地域により差があります。)

 

塩漬は一般的には野菜の重量に対して15~25%の塩を用い、十分な重石をのせ水分をなるべく取り除きます。塩度がかなり高い為、腐敗菌等などが増殖できにくくなり、結果として長期間保存可能な漬物となります。

塩漬は高い塩度の塩で漬け込みますので、しっかりした品質管理のもとでは1年を通して常温保存可能になります。(場合によっては2~3年でも保存可能です。)

 

塩漬は保存は効きますが、塩度が高いのでこのままでは食べられません。そこで塩漬を水でさらして、塩分をある程度取り除き、食べやすい塩度までもって行きます。この工程を「塩抜き」または「脱塩」といいます。

 

「塩抜き」した塩漬野菜は食べることは出来ますが、塩味のみであまり美味しくありません。そこで塩抜きした塩漬野菜に砂糖や醤油・味噌などで味をしみこませ美味しく味付けします。

皆さんがスーパなどでよく見かける「しょうゆ漬」や「かす漬」などは上記の塩漬野菜を塩抜きし味付けをしたものです。

 

上記では「塩蔵野菜」=「塩漬」は高い塩度のため、水で塩抜きしてから、調味料等で味を付けると述べました。この調味料等で味をしみ込ませた塩漬野菜を調味漬と呼び、業界では古漬といいます。(*)一般の方には塩漬やら古漬やら色々な呼び方があり混同しがちです。野菜を低塩度で浅く漬け、味付けしたものを「浅漬」と呼ぶのに対して、高塩度で漬けた野菜を塩抜きして味付けをしたものを「古漬」と考えると整理しやすいと思います。

 

(*)前田安彦:漬物学、幸書房より

瓜 漬け込み 漬物カフェ
写真は瓜の塩漬工程です

「古漬(調味漬物)」が出来るまで

― 本格的な漬物の製造工程の説明です ―

塩漬メニューのページでいろんな種類の塩漬をご紹介しました。ここでは、ご自分で作った「塩漬」を塩抜き・味付けした本格的な漬物である「古漬」の製造工程ご紹介します。この工程をご理解いただければ、ほとんどの「古漬」が出来るようなります。

「古漬」の工程の流れ

 

 「塩漬」①

 

  ↓

「塩抜き」(脱塩)②

 

  ↓

「圧搾」(搾る)③

 

  ↓

「調味液等で味付け」④

 

  ↓

    「完成」⑤

「古漬」が出来るまで

「古漬」は高塩度で漬けた塩蔵野菜=塩漬から作ります。

 

①「塩漬」を用意します。たくさん漬けていても、全部ではな

 く、食べる分だけの量を取り出し用意しましょう。

 

②「塩漬」は20%位の塩分で、とても食べれません。

 そこで、水に浸して塩漬の塩分を薄くします。この工程を

 「塩抜き(脱塩)」といいます。

 作る漬物の種類によって、塩抜き工程も塩分がほぼ0%~3%

 程度と様々です。

 

③先の工程②で塩抜きした塩漬野菜は、水分をたくさん含んで

 いるので柔らかく、歯ごたえが良くありません。

 そこで、この塩抜きした野菜を重石などで圧搾(搾ること)し

 て、水分を取り除きます。姿漬けはあまり強い力で圧搾する

 と、形が崩れるので軽めの圧力で圧搾します。

 

 一方、刻み漬では水分が残っていると味がぼやけ、歯ごたえ

 が特ありませんので、強い圧力で搾ります。

 

④先の工程③で圧搾した塩漬は野菜の風味は残っているものの

 味はほとんどありません。ここで、調味液を足して味付けを

 します。

 

 この調味液がしょうゆ味ベースなら「しょうゆ漬」、酢がベ

 ースなら「酢漬」となります。

 

⑤先の工程④で味付けした塩漬を袋等に入れれば完成です。

 しょうゆ漬等は1週間もすれば完成ですが、みそ漬や粕漬約

 1か月程度寝かせて味を付けます。



「塩漬」から様々な漬物を作る

― ここから漬物の種類が分かれます ―

以下、「塩蔵野菜」から出来る主な調味漬=「古漬」を何種類かご紹介します。

 

 

・「しょうゆ漬」

 野菜の「塩漬」を水で塩抜きして、しょうゆがベースの調味液で味付けした漬物です。福神漬などが代表的なしょうゆ漬です。

 しば漬も昔ながらのの製法は発酵を用いたものでしたが、昨今はしょうゆ漬のものが主流です。

 福神漬などは刻んだしょうゆ漬ですが、姿漬のしょうゆ漬もあります。(例えば胡瓜のしば1本漬など)

 高菜漬は姿漬も刻み漬も両方ありますね。

 

・「酢漬」

 野菜の「塩漬」を水で塩抜きして、酢がベースの調味液で味付けした漬物です。甘酢生姜(ガリ)や紅生姜などが代表的な酢漬

 です。姿漬の酢漬はらっきょう漬などがあります。

 

・「粕漬」

 野菜の「塩漬」を酒粕がベースの調味粕で味付けした漬物です。刻み漬ではわさび漬け、姿漬では瓜の奈良漬などがあります。

 

・「みそ漬」

 野菜の「塩漬」を水で塩抜きして、みそがベースの調味みそで味付けした漬物です。一般的には姿漬が多いようです。

 

・「梅漬・梅干し」

 梅漬類は分類上は塩漬に当たります。梅を塩漬して日干しした物を「梅干し」、塩漬のみの物を「梅漬」といいます。昔は梅の

 塩漬に赤しそで着色したものが主流でしたが、現在は低塩化の時代となり、梅の塩漬を水で脱塩(塩抜き)して調味液で味付け

 するものが多くなりました。

 この調味した梅漬を「調味梅漬」、調味した梅干しを「調味梅干」と呼びます

奈良漬 瓜 漬け込み 漬物カフェ
写真は奈良漬の漬け込み(味付け)工程です

「古漬」以外の主な漬物

― 他の種類の漬物です ―

・「たくあん漬」

 「古漬」以外の有名な漬物にたくあん漬があります。たくあん漬は分類上では「ぬか漬」になります。生の大根を干した「干し

 たくあん」と、塩漬した大根を用いる「塩押したくあん」があります。

 

・「キムチ」

 赤唐辛子粉、にんにく、生姜等を用いた漬物をキムチと呼びます。「白菜キムチ」が有名です。現在では漬物の主流となってい

 ます。

 

・「こうじ漬」

 麹にみりんや砂糖類を加え調味した漬物をこうじ漬と呼びます。べったら漬などはこうじ漬に当てはまります。最近は麹ブーム

 で召し上がる方も多いのではないでしょうか?

たくあん漬 大根 ぬか漬 漬物カフェ
たくあん漬は漬物の王様です

さあ、本格的な漬物を作りましょう!

― 塩漬から始めましょう ―