浅漬の調味液について

― 浅漬の調味液の作り方・考え方―


このコーナーでは浅漬の調味液の作り方・考え方・添加物を使用した応用とその原価計算等を少し専門的にご紹介します。

漬物作りは、浅漬にしろ、古漬にしろ塩漬の調味で味が決まります。品物によってはメインの野菜の塩漬の価格よりも調味液の価格の方が高くなることもしばしばです。それだけ、調味液の組み立ては重要になってきます。

少々難しい箇所もあるかも知れませんが、原価計算などは必要な作業なので、わかる範囲だけでも閲覧して頂ければ幸いです。

なお、私の今までの経験と現場でで必要とされてきた事をまとめた主観的な考え方ですので、ご了承ください。

また、調味料の組み立て・使用添加物・計算の考え方等は 漬物製造論で尊敬する下記の先生方の著書等から学びました。感謝とご報告をのべると共にご了承ください。

※ 前田安彦:漬物学、幸書房

※ 小川敏夫:漬物製造学、光琳



浅漬調味液で分析・計算する成分

調味液考察に必要な成分―

ここでは、調味液(浅漬に限らずすべての種類の漬物に使う調味液)で必ず計算で使用する代表的な成分をご紹介します。

 

  ・            漬物の塩度・しょっぱさに作用します。  

 

  ・            漬物のペーハーに作用し、あじの引き締め等に作用します。   

 

  ・糖分           漬物の甘味度に作用します。

 

  ・全窒素          旨味の目安になる成分です。全窒素が多いと旨味も強く感じられます。

 

 

濃度について

 

よく、「塩分〇〇%の水溶液」と耳にします。漬物業界でもよく使う計算です。重量パーセント濃度の用語と計算式を示します。

まずは用語の説明です。以下の通りです。

溶液:色々な物質が溶けて混ざった液体  溶質:溶液に溶け込んだ物質

塩水で例えれば、 溶液:塩水   溶質:塩   となります。

 

パーセント濃度の計算式は

 

  (重量)パーセント濃度=溶液の質量(g)÷ 溶液の質量(g)× 100 

 

となります。

 

例えば塩1Kgを水10L(=10Kg)に溶かし、食塩水を作るとします。この時の食塩水の塩の重量パーセント濃度は

 

   塩のパーセント濃度=塩1Kg(溶質の質量) ÷(塩1Kg  + 水 10Kg) × 100 =9.09(%)

 

となります。

 

一方、塩1Kgを水9L(=9Kg)に溶かし、食塩水を作るとします。この時の食塩水の塩のパーセント濃度は

 

   塩のパーセント濃度=塩1Kg(溶質の質量) ÷(塩1Kg  + 水 9Kg) × 100 =10(%)

 

このように、塩1Kgを水10Lに溶かしても塩度10%の塩水にはなりません。塩1Kgを水で溶かして合わせて10L(10Kg)で塩度10%の塩水になります。調味液を作る際は後者の方法で作ります。

 

 

実際に調味液を作ってみる

 

基本の調味液を作りましょう!」のコーナーで紹介した基本調味液で実際に塩度、酸、糖分等の成分と価格表を作ってみます。

表の作成に当たってはExcel等の表計算ソフトを使うと便利です。

下記の表は基本調味液のデータをエクセルで作った計算例です。

 

以下表と用語の説明を交えながら、調味液について考えます。

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表① エクセルで作った基本調味液の計算例です

全窒素は旨味の指標となる成分です。「味の素」は本来グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニㇽ酸ナトリウムで構成されますが、ほとんどがグルタミン酸ナトリウム(以下グルタミン酸Na又はグルソーと略)ですので、グルタミン酸ナトリウム単体で計算します。グルソーの全窒素量は100g当たり7.5gです。

しょう油は塩分、全窒素分が含まれます。メーカーのホームページや容器ラベル等に規格成分等が表示されていますので、参考にします。

みりん風調味料もメーカーのホームページや容器ラベル等に規格成分等が表示されている場合があるので、参考にしましょう。ない場合はおおよそ、上記の表の値を参考にされて良いと思います。

醸造酢は各種のパッケージに酸度(%)が表記されています。

 

上記の表から、調味料を作る上で重要な成分が「塩度」・「糖度」・「酸度」です。全窒素分はここでは目安程度の成分と考えて良いと思います。

 

次に調味液の単価・成分等を考えます。

実際に調味液を作るときは、各材料によりK(キログラム)やL(リットル)など計量する単位が違います。本来はK又はLのいずれかに統一すればよいのですが、現実的にはかなり面倒な作業になります。

下記の表は1L単価と1K単価を併記した調味液の計算例です。

 

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表② エクセルで作った基本調味液の計算例です

実際上記の調味液は10Lで表示していますが、実際の重量は10.032Kgとなり、1Lの当たり重量は1.003Kg です。

1L単価と1Kg単価も若干数値が異なります。

 

各成分量の数値の見方について考えます。例えば、塩量について考えます。

   ■色の3.15%はL(リットル)で計算しているので、重量体積パーセント濃度となります。

   色の3.01%はK(キログラム)で計算しているので、重量パーセント濃度となります。

 

実際に現場では、浅漬などの濃度の薄い調味液は1L当たりの単価で計算することが多いようです。

一方、みそ漬・かす漬などの濃度の濃い漬物は、調味液(調味みそ・調味かす)は1K当たりの単価で計算します。

 

どちらも、間違いの数値ではないので、調味液を計算する際は、商品の種類により調味液計算は体積(リットル)でするか、重量(キログラム)でするかを決めると良いと思います。

 


食品添加物を使用して作ってみる

 

今までは、スーパーマーケットでも入手できる食材で、調味液を作りました。1L当たり35~36円でもかなり安く出来ているのですが、調味液はコストが安く、日持ちする品質が一番です。このためには、食品添加物の使用が不可欠になってきます。

ここでは、上記の基本調味液を食品添加物と併用した液を作り、調味液単価・成分について考察したいと思います。

 

今回新たに調味液に使用する食品・食品添加物とその役割をご紹介します。食品添加物については添加物について学びましょう!のコーナーをご覧ください。

 

食品に分類

  ・アミノ酸液        しょう油の素ともいわれ、全窒素分(旨味)の含有が高い液体です。 

                アレルゲンの大豆の表示が必要です。 

 

  ・高酸度酢(10%)    酸度が高い醸造酢です。一般的に10%の高酸度酢を使用します。   

 

  ・果糖ぶどう糖液糖     果糖・ぶどう糖を含む、粘度のある液体で、砂糖の代替品や砂糖との併用に用います。

                甘味の度合いは砂糖とほぼ同じで、同量用いることもあります。

 

  ・発酵調味料        みりん風調味料と同じです。表記する場合は「発酵調味料」となります。

                色々なアルコール度数・糖分の発酵調味料があり、用途により使い分けします。

 

食品添加物に分類

 

  ・グルタミン酸ナトリウム  昆布の旨味成分の本体としてよく知られ、食品のうま味の付与、塩慣れなどに使用します。

   (グルソー)

 

  ・酢酸ナトリウム     漬物製造では、ペーパー調整(主に浅漬の緑色保持)、風味、日持ち向上使用します。

 

  ・ステビア        塩慣れ、甘味付与に使用します。砂糖の約300倍の甘味があります。

 

 

 

実際に添加物を併用して、調味液を作ってみる

 

 

下記の表は添加物を併用して、基本調味液のデータをエクセルで作った計算例です。基本調味液は1L当たり単価で計算する事が多いので、ここでは1K単価は省略します。砂糖の代わりに果糖ぶどう糖液糖を、醸造酢(4.2%)の代わりに高酸度酢(10%)を、薄口しょう油の代わりにアミノ酸液を使用しています。

また、新たに酢酸ナトリウム製剤を使用しました。浅漬の緑色保持と、日持ち向上の目的で添加します。

業務用の資材等を使用した事も影響しますが、塩・酸の量、甘さとしての甘味度もほぼ同じで、かなり調味液単価が安くなることが分かります。

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表③エクセルで作った基本調味液の計算例です

さらに安く作ってみる

さらに安く、調味液を作ってみる

 

 

商品は安全な範囲で、安く作ることが当然望まれ、売価にも反映します。表③の調味液を改良して、もう少し安く作ることを目指します。

下記の表④は新たにステビア製剤を併用して、基本調味液のデータをエクセルで作った計算例です。

表③では調味液価格合計が23.75円に対して果糖ぶどう糖液糖の使用価格が82.5円とかなりのウエイトを取っており、調味液価格を押し上げているのが分かります。このような場合、代替品があってかつ、安価で出来る場合は改良します。

ここでは、果糖ぶどう糖液糖を、甘味度が砂糖の約300倍のステビア製剤で置き換えて調味液を改良しました。添加量は色々な量で試験的に作って、元の調味液に近い甘味度で決定します。

漬物 調味液 原価計算 価格計算 方法 製造原価 漬物カフェ 
表④エクセルで作った基本調味液の計算例です

ステビア製剤は1K単価が3,300円もしますが、添加量がごく少量で済みます。その為、表④から1L当たりの単価が16.82円とかなり安く出来ることが分かります。

本来の調味液は他に複合旨味製剤、グルソー以外のアミノ酸等を加えもう少し価格が上がります。ここでは、分かりやすく説明する為に、必要最低限の資材を用いました。

 

このようにして、まず調味液の味が決まったら、色々な調味料・添加物で置き換えて価格が下がるように計算します。