―利益が出る原料価格を計算する―
このコーナーでは浅漬原価計算等を少し専門的にご紹介します。
白菜などの原料価格は毎日変化します。また、気候にもよりますがその相場の振れ幅が結構大きいものです。相場が変わる度に、原価の変動も起きます。
浅漬の塩漬価格計算②では塩漬の歩留まり計算を、浅漬の原価計算①で浅漬製品の原価計算をご紹介しました。
ここでは今までご紹介した計算方法を元に、製品の利益を出すための原料価格を計算することを考えます。
なお、私の今までの経験と現場でで必要とされてきた事をまとめた、あくまでも独断的・主観的な考え方ですのでご了承ください。
― 費用を仮定で固定化する―
上図は浅漬の原価計算①のページで計算した白菜漬の例です。このコーナーでは白菜漬の販売に当たって、利益がでる白菜の箱単価がいくらかを計算することを考えます。
製品にかかる原価のうち、労務費・経費は会社・工場によって価格のかけ方がいろいろと種類があると思いますが、ここでは、労務費・経費を仮定で固定し、材料費(塩漬価格)に特化して箱単価を計算しようと思います。
図①を元にして、一般的な商品原価を表したのが図②です。
図②では白菜漬製品の販売価格を100円としたときの、各費用と営業利益を示しています。ここでは計算上塩漬価格44.42円以外の項目は変動しないとします。(営業利益を増やしたい場合は販売価格を上げます。)
上図③は図②を簡略化したものです。売上(販売価格)は製造原価と売上総利益(粗利)から成り立っています。それぞれをA,B,Cとします。Bの製造原価を塩漬価格とそれ以外の費用に分けてそれぞれをX,Eとします。ここでは、塩漬価格X以外は変動しないと仮定してますので、販売価格がいくらか決まれば、塩漬価格Xを求めることができます。
図③より
A(販売価格) = B(製造原価) + C(売上総利益)
= X(塩漬価格) + E(その他の原価費用) + C(売上総利益)
となり、X(塩漬価格)は
X(塩漬価格) = A(販売価格) ー E(その他の原価費用) ー C(売上総利益) ★
浅漬の塩漬価格計算②のページで白菜の漬け上がりキロ単価の計算は、
F(漬上がりキロ単価) = aT(箱単価)+b ■
となりました。
漬上がりキロ単価をF・箱単価をTとしています。白菜の漬け込みデータから得られる1次方程式の傾きをa・切片をbとしています。
一方、塩漬価格Xは漬上がりキロ単価Fの割合で求めることができますので、割合をhとすると、
X(塩漬価格) = h(漬上がりキロ単価対する割合) × F(漬上がりキロ単価) ▲
となります。式★・▲より
hF = A - E - C
となり、Fに■を代入して、
h(aT+b)= A - E - C
となり、この式からT(箱単価)は
T = ( A ー E - C - hb ) ÷ ah ◆
となります。
実際に図②の塩漬価格以外の数値を式◆に入力して計算します。図④は図②の塩漬価格以外のデータを示したものです。
決まったデータで□の塩漬価格を44.42円とするために、白菜の箱単価をいくらにすれば良いかを計算します。
ここでは漬け込みデータのの式は浅漬の塩漬価格計算②で計算した2017年の漬け込みデータを使ってみます。
F(漬上がりキロ単価) = 0.1509 × 箱単価 - 18.506 (2017年漬け込みデータ)◇
これより
a = 0.1509 b = -18.506
となります。製品の塩漬(内容量)は200g(0.2Kg)とします。したがって
h = 0.2
となります。以上より求めたい白菜の箱単価は
T = (100 - 28.25 - 27.33 - 0.2×(-18.506)) ÷ (0.1509×0.2)
= 1594.46 (円)
と計算できます。
(2017年漬け込みデータ)◇の式から箱単価1594.46円を代入して、キロ単価を逆算してみます。
F = 0.1509 × 1594.46 -18.506
= 222.098 (円/キロ)
となり、製品の塩漬は200gとしましたので、
X(塩漬価格) = h(漬上がりキロ単価対する割合) × F(漬上がりキロ単価)
= 0.2 × 222.098
= 44.4196 ≒ 44.42(円)
となり、図②と同じになりました。
この場合は2017年のデータを元に、販売価格100円・売上総利益27.33円・製造原価72.67円で製品を製造する場合、原料の白菜の箱単価は1594.46円となります。
箱単価が1594.46円よりも安いときは、製造原価が下がり売上総利益が増えます。逆に箱単価が1594.46円よりも高いときは売上総利益が減り、高すぎるときは赤字になります。
この計算はいつの時期の漬け込みデータを使うかによって計算結果が変わるので注意します。1年間のデータで計算するのか・四半期のデータで計算するのかはその時の必要性によって選択すればよいと思います。